精油と香りの記憶の深いつながり
暮らしの中で、ふと香りに出会った瞬間に心の奥に眠っていた記憶や感情が、やさしくほどけることがあります。
それは決して「いい香り」や「好きな香り」ではないかもしれません。
でも、どこかで嗅いだことがある――その瞬間に、過去の時間が色を取り戻し、なつかしさで胸がいっぱいになることも。
今日は、香りが記憶や感情と深くつながっている理由、そして日本の木から生まれた精油が、感覚の奥に触れる存在であることを、お客様の実際の体験とともにご紹介たいと思います。
目次
- かおりは記憶をほどく鍵
- ヒバの香りがよみがえらせた、祖母との思い出
- 土地の香りが感情を動かす――コウヤマキのエピソード
- 和精油がもたらす感覚の変化
- 暮らしの中で、香りと記憶を育てる
- 精油を探すなら、こちらから
香りは記憶をほどく鍵
香りは、五感の中でももっとも記憶と密接につながっている感覚と言われています。
鼻から脳へダイレクトに届く香りの情報は、感情や記憶をつかさどる「大脳辺縁系」に瞬時に届きます。
そのため、記憶にある香りとの出会いは、ただ「心地よい香り」としてだけでなく、心の奥にある感情を呼び覚ます“きっかけ”にもなり得るのです。
ヒバの香りがよみがえらせた、祖母との思い出
あるお客様との売り場でのエピソードをご紹介します。
ヒバの精油を試香された際、
「これは特別に好きな香りというわけではないのに、なぜかとても気になる」
と、 何度もボトルのふたを開けて香りを嗅いでいました。

その後しばらく黙った後、
「……あっ、これ、子どものころによく通った製材所の香りかもしれません」
と、ぽつりとおっしゃいました。
放課後、学校からの帰り道にあった製材所のそばを通るたびに感じていた、木が削られる匂い。
そして、その記憶の中には、製材所のおじちゃんだけでなく、当時一緒に暮らしていた、大好きなおばあさまの存在があったそうです。
その場で目に涙を浮かべながら、
「思い出しただけで、胸があたたかくなるような、少し切ないような不思議な気持ち」
と、おばあさまと思い出をいくつか話してくださいました。
ヒバ精油の香りには、木の芯の深さと、どこかスモーキーなあたたかさがあります。
この独特の香りは、ただの“ウッディ系”とは異なり、日本の木ならではの落ち着きや、懐かしさを感じさせる香りです。
ヒバは古くから建築材や神社仏閣にも使われてきた木。
その香りには、空間を清めるような神聖さと、包み込まれるような静けさが共存しています。
だからこそ、「この香り、どこかで嗅いだことがある」と感じる方が多く、香りと記憶が深く結びつく体験が生まれやすいのかもしれません。
冒頭でご紹介したお客様のように、ヒバの香りをきっかけに、子どものころの記憶が一気によみがえり、感情が動いたというお声は、決して珍しくありません。
精油が感情を動かす。
その出来事は、何か特別な技術や演出があるわけではなく、香りそのものが持つ力によるものです。
ヒバの香りは、過去の時間や大切な人との記憶、自分でも忘れていた想いと、静かに向き合わせてくれる香りです。
「ヒバ 精油 なつかしい」「香り 記憶」という検索をする方が増えている背景には、香りが単なるフレグランスではなく、“感覚の記憶”に深く関わっていることへの関心が高まっていることもあるでしょう。
香りは、言葉では説明できない感情や記憶を引き出す鍵。ヒバという日本の木が持つその香りは、まさにその鍵のような存在です。
土地の香りが感情を動かす――コウヤマキのエピソード
ヒバ以外にも、地域に根ざした植物の香りが、人の記憶に触れることがあります。
まだサロンを運営していたころ、若山出身の方が、コウヤマキの精油を嗅いだ瞬間、
「一気に子どもの頃の風景があふれた」
と話されました。

それは、学校の帰り道に通った、コウヤマキの森の記憶。
帰り道に近所のおばちゃんが、おかえり!といってくれたあの日の記憶。
「香り 記憶」「精油 感情が動く」という検索がされるのは、香りが人の心の奥深くと結びついていることを、私たちが実感していることの現れだと思います。
和精油がもたらす感覚の変化
「和精油 効果」と検索する方が増えている背景には、日本の植物から生まれた香りを体験したときに感じる、“何かが違う”という実感があるのかもしれません。
ヒバやコウヤマキはちょっと個性的な香りの日本産の精油。
でもそれらの香りに触れると、たとえば、気持ちの重さがふっとほどけたり、呼吸が自然と深くなったりするような、目には見えないけれど、確かな“感覚の変化”が訪れることがあります。
それは単なる「好きな香り」や「リラックスできる香り」ではなく、自分の内側にある状態が、静かに動き出すような感覚。
海外の華やかなアロマオイルと比べても、
なぜか日本の精油を使ったときのほうが、自分の本来のリズムに戻れる気がする――
そんな体験をされる方が、少しずつ増えています。
それは「効果効能」では語りきれない、香りと感情、香りと記憶がつながっている感覚なのかもしれません。
暮らしの中で、ただ香りにふれるだけで、自分でも気づいていなかった気持ちや想いに出会える。和精油は、そんな時間をそっと差し出してくれる存在です。
暮らしの中で、香りと記憶を育てる
大切なのは、「香りを正しく使う」ことではなく、
香りとともに、“自分と向き合う時間”を持つことだと、私たちは考えています。
たとえばヒバやコウヤマキの精油を、ちょっと疲れた時の深呼吸の時間に使うことで、その香りが「私のコンディションを整え元気にしてくれる香りの記憶」として、少しずつ積み重なっていきます。
香りは、日々の小さな時間を記憶に変える鍵。
そして、自分の感情とそっと向き合うための道しるべにもなるのです。
本文中でご紹介した精油
このブログは、「国産アロマの専門店かおりと-kaorito-」代表 古山順子が執筆しました