ユズの歴史
ユズは中国西部を原産とし、日本には奈良時代から平安時代にかけて伝来したと考えられています。
耐寒性が高く、日本の風土に適応し、各地で栽培されてきました。
江戸時代には冬至の柚子湯が定着したと言われています。
日本には季節のものを味と香りで楽しむ文化がありますが、柚子もその一つ。古くから日本の食や香りの文化を支えてきた植物です。
ユズの果皮から得られる精油は近年になって多く流通するようになりましたが、抽出法によって個性が大きく変わります。
圧搾法、水蒸気蒸留法、溶剤抽出法。
アロマの参考書では、大きく3つの抽出法が紹介されていますが、それぞれの中でも抽出法は細分化されており、それぞれ抽出される精油の成分構成は異なっています。
「かおりと」では、圧搾法、水蒸気蒸留法(常圧・減圧)をラインナップしています(それぞれ産地が異なります)。なお、香料会社から分けていただいた溶剤抽出のユズは、苦みをはっきりと感じる香りでした。
抽出方法で変わるのは微量成分の構成
柑橘系の精油の主成分は、リモネン。3つのユズ精油も60~65%前後のリモネンを含んでいます。そのあとには、γ-テルピネン、β-フェランドレン、α-ピネン、ミルセンと主要成分が続きます。
3つの精油はいずれも、上位5成分で85%以上を占めているため、主要成分だけを見るとほぼ同じに感じてしまうかもしれません。
でも、香りを嗅ぐと全然違う個性があるのは、主要成分以外の重なりによるものなのです。
私は個人的に、柑橘系精油は圧搾法抽出のものが一番好きなのですが、ユズはどの抽出方法の精油も捨てがたい良い香り。こんな植物はなかなかないと思っています。
圧搾法のユズ精油(愛媛県)の香りを作る成分
特徴的に感じるのは、βファルネセンやチモールの草っぽい香りや、カジノール、ゲルマクレンD、β-カリオフィレンなどウッディな香り。
甘さを感じる成分が控えめで輪郭がはっきりしていて、ハンサムな印象の香り。少し青みも感じますが、3種の中では最も力強く、ユズ感たっぷりの香りです。
気になる光毒性についても成分分析結果といろいろな分析から私なりにまとめてみました。
圧搾法抽出精油のベルガプテン
今回の圧搾法抽出ロットではベルガプテンは検出されませんでした。
いろいろな文献を見ていると、圧搾法でもベルガプテンが検出されないものがある一方で、圧搾法抽出のユズ精油には0.5~4ppm含まれる可能性があるという報告があります。
※光毒性の心配がないとされるマンダリン精油は~3ppm程度
実は、圧搾法と一口に言っても、現代の機械抽出法にはペラトリーチェ方式、ブラウン方式、FMC方式などがあります(かおりとの精油はFMC方式で抽出)。
それぞれの抽出方法によってフロクマリンの抽出率は変わりますし、抽出後のウィンタライゼーション(脱ロウ)が不十分な場合、ワックス分が残存し、成分分析に影響を与える可能性があります。
話が少しそれましたが、光毒性が懸念されるベルガプテン。
IFRAでは、洗い流さない製品中のフロクマリン濃度上限を15ppmと定めています。仮にユズ精油が4ppmのベルガプテンを含有していた場合、精油を単体で2%濃度で使用すると、最終製品中濃度は0.08ppmとなります。
ただしロットごとに異なる場合もありますし、先ほど書いたようにワックス分などにより成分分析結果に表れていないこともありますので(これはすべての精油に言えること)ロット分析を確認すること、そして十分に希釈して使用することが大切です。
※ベルガプテンを多く含むベルガモットのIFRA推奨希釈濃度は0.4%以下
それでも、気になる方は、水蒸気蒸留法の精油にはベルガプテンが含まれないことが分かっているので、そちらをどうぞ!
常圧水蒸気蒸留法のユズ精油(徳島県)の香りを作る成分
常圧蒸留のユズ精油の6位以下の成分をみると、リナロール、α-テルピネオール、テルピネン-4-オールなどのアルコール類が多く含まれています。
3つの中では一番フレッシュで華やか。黄色く熟したユズの皮をナイフで切った時の香りです。
減圧水蒸気蒸留法のユズ精油(高知県)の香りを作る成分
減圧蒸留は、蒸留窯内の気圧を下げることで沸点を下げて抽出する方法です。
沸点が下がることで、重たい成分は抽出されず、軽い成分が中心になります。
今回の減圧蒸留の精油は、香りを嗅いだ瞬間に甘さを強く感じたのですが、その香りの正体は、酢酸エチル(エチルアセテート)や酪酸エチル(エチルブチレート)などの成分。
いずれも微量ですが、フルーティでジューシーな印象を支えます。
特に酪酸エチル(エチルブチレート)はパイナップル様のニュアンスを持ち、減圧ユズの甘さを強調します。
香りは最もフルーティでジューシー。幸せを感じる香りです。
この違いが、産地ごとのユズの成分差なのか、抽出方法のみによる差なのかはわかりませんが、同じ植物でもこんなにも香りの印象が違うんだということを感じることのできる精油なので、好みに合う1本をお手元に常備していただければと思います。



