何かを人に伝えるとき、私はいつも「本当にこれでいいのか?」と考えます。知らないままに何かを扱ったり、人に教えたりすることがどうしても苦手なのです。本や誰かの意見をそのまま鵜呑みにするのではなく、自分自身で確かめてからでないと、人に伝える自信が持てません。
「かおりと」が生み出す製品も、そんな私の姿勢が色濃く反映されています。ものづくりにおいて何が大切なのか、それをお話ししたいと思います。
知ることから生まれる確信
「山のことは山の方に」「化粧品の製造はプロフェッショナルな会社に」――私たちはそれぞれの専門性を尊重しながらものづくりを進めています。しかし、それは単に「任せている」だけではありません。
例えば、山で採れる植物のことを知るために、私は実際に山に入ります。その自然の美しさや力強さだけでなく、どれほど厳しい環境の中で植物が育つのか、実際に足を踏み入れてみて初めて知ることができます。畑にお邪魔したときには、作業の大変さを目の当たりにしました。汗を流しながら作物を育てる農家の方々の姿に、感謝と尊敬の気持ちが深まるのです。
精油の抽出も同じです。私たちはその工程の多くをパートナーに委ねていますが、自分でも抽出を行うことで、精油がどのようにして生まれるのか、原料の加工から製品化まで、何がどのように影響するかを理解しています。その経験があるからこそ、どの工程が製品の品質に直結するのかを見極める目を持つことができるのです。
「任せる」と「責任を持つ」
ものづくりの中で、誰かに任せるという行為には大きな責任が伴います。「私にはわからないからお任せします」という態度は、決してお客様に対して誠実ではないと考えています。だからこそ、私たちは任せる前に学びます。山や畑、抽出現場、そして化粧品の製造工程に関わることで、任せた先の工程に対して理解を深める努力をしています。
特に化粧品に関しては、私自身が手作りコスメを楽しんできた経験が役立っています。製造会社の方々と打ち合わせをする際にも、実際に手を動かしてきた経験があることで、適切な意見を持ち寄ることができます。それが「かおりと」らしい製品を生み出す原動力になっています。
ものづくりへの責任感
商品を作る、そして売るという行為には大きな責任が伴います。特に「かおりと」のような自然素材を扱うブランドにおいては、ただの製品ではなく、「自然そのもの」をお客様にお届けするような感覚があります。そのためには、原料となる植物の背景や、製造過程での工夫を深く理解していなければなりません。
精油のことを全く知らないまま販売する、化粧品について何も考えず人任せにして開発する――こういった行動は、私たちにとっては「無責任」であり、「失礼なこと」と感じます。だからこそ、私たちは日々学び、経験し、知識を深め続けることを怠りません。それは決して簡単なことではありませんが、それを乗り越えるからこそ、胸を張ってお客様に製品を届けられるのです。
誠実さが生み出す価値
お客様に対して誠実であるということ。それは、単に品質の良いものを作るだけではなく、製品に込めた思いや背景を正直に伝えることでもあります。そのためには、自分たち自身が納得し、自信を持てるものしか作らないという覚悟が必要です。
時には、自分たちの知識不足を痛感することもあります。しかし、そのたびに学び、努力し続けることが、「かおりと」としての使命だと思っています。製品の背景にある自然や人々の努力を知り、それをお客様に伝える。そうすることで、ただの「モノ」ではなく、心に響く価値を届けることができると信じています。
小さな香りに込めた大きな願い
「かおりと」の製品を手に取るとき、その裏側にある自然や人々、そして私たちの思いを感じ取っていただけたら嬉しいです。香りが生活の中にそっと寄り添い、小さな癒しや彩りを与えてくれること。それが、私たちが願うものづくりの本質です。
これからも、「わからないまま」を避け、知り、学び、確かめながら進む。そうして誠実に作り上げた製品をお届けし続けます。それが「かおりと」のものづくりの哲学です。